印紙税の話

2018年10月

印紙税の話

  • 2018年 10月 31日

印紙を貼らなければならない書類は何?

印紙を貼らなければならない書類は、法律で決まっています。具体的には、不動産の売買契約書、請負契約書、5万円以上(平成26年3月31日以前に作成したものは3万円以上)の領収書などです。
なお、印紙を貼る必要があるか否かは、書類のタイトルではなく、記載内容全体を踏まえて判断します。そのため、新しく作成した書類や、多数の人にほぼ同じ内容の書類を交付される場合などは、印紙を貼らなければならない書類か否か、念のため確認されることをお勧めします。

ひとまず200円の印紙を貼っておけば大丈夫?

貼らなければならない印紙代は法律で決まっていまして、書類の内容に基づいて金額が決定されます。なお、印紙税は、最低200円から最高60万円までの幅があります。
 

印紙の貼り忘れたら、どうなるの?

印紙を貼らなければならない書類に、適切な金額の印紙が貼られているか否かについては、税務署の調査対象に含まれます。そのため、税務調査の際、税務署から印紙の貼り忘れや貼るべき印紙の金額が不足していることを指摘されることがあります。
仮に、税務署から適切な金額の印紙が貼られていないことを指摘され、その指摘内容が正しかった場合、貼り忘れた印紙の金額若しくは貼るべき印紙の金額の不足分を追加で納付する必要があることはもちろん、ペナルティとして、貼り忘れた印紙の金額若しくは貼るべき印紙の金額の不足分の2倍の金額を納めることが必要になります。

自分の保管する書類だけに印紙を貼っておけば大丈夫?

印紙税は、書類の作成者に納付義務が課されます。そのため、誰が書類を作成したかが重要なポイントになります。
また、契約書などのように複数人で書類を作成した場合、書類の作成者全員が、全ての書類に対する印紙税を連帯して納付する義務を負います。そのため、書類の作成者のいずれかが保管する契約書に印紙が貼られていなかった場合、税務署は、印紙を貼って書類を保管していた書類作成者に対しても、印紙税とペナルティを納付するよう請求することができます。
したがって、複数人で書類を作成した場合は、すべての書類に印紙が貼られているか否かを確認することを強くお勧めします。


税務調査の話

  • 2018年 10月 31日

税務調査の前に税務署から連絡がくるの?

一般的には、税務署側から納税者若しくはその顧問税理士に対して、事前に税務調査をする旨(調査の開始日時、開始場所等)の連絡がなされます。
ただし、税務署側が必要であると判断した場合は、事前の連絡を行うことなく、調査開始日当日に、直接納税者の事務所等を訪問し、調査を開始することもあります。

税務調査対応で気を付けることは?

税務調査は、法律に基づき任意で行われる手続ですので、税務署員が納税者に無断で事務所内の引き出しを開けたり、PCを操作したり、書類の内容を精査することはできません。そのため、税務署側から納税者に対し、必ず調査に関する依頼がなされます。
そこで、納税者としては、税務署側からの依頼内容について、法的な視点で対応する必要があるか否かを見極めることが必要となります。

税務調査後は、必ず修正申告をしなければならないのですか?

必ず修正申告をする必要はありません。
税務調査終了時、税務署側は、納税者に対し、調査結果を説明すると共に、納税者の申告した税額に不足があると判断した場合は、修正申告をするように勧めることができます。ただし、修正申告をするか否かは、納税者の判断に委ねられており、修正申告をする義務はありません。
仮に納税者が修正申告をしなかった場合、税務署側は、不足している税額を納付する旨の命令(「行政処分」と言います。)をするか否かを判断し、命令をすることが必要であると判断した場合、納税者に対し行政処分の通知書を渡します。
納税者は、受領した通知書の内容を精査し、内容に不服がない場合は、通知書に記載された税額を納付することができますし、内容に不服がある場合は、通知書を受け取った日の翌日から3カ月以内に、不服申立をすることができます。
なお、不服申立をする場合でも通知書に記載された税額を納付しなければ延滞税が発生しますので、不服申立が認められなかった場合に備えて、予め通知書に記載された税額を納付しておくことをお勧めします。


高度プロフェッショナル制度について

  • 2018年 10月 30日

「高度プロフェッショナル制度」って何?

働き方改革の一環として労働基準法が改正され、職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、本人の同意等を条件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度です。

「高度プロフェッショナル」だと何が変わるの?

高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者は、労働基準法に定められた次のような規制の適用を受けなくなります。
(1) 労働時間(1日8時間、週40時間)
(2) 休憩(6時間超で45分、8時間超で1時間)
(3) 休日(毎週少なくとも1回の休日)
(4) 割増賃金(時間外、休日、深夜)

どのような場合に対象となるの?

労働者と使用者が次の要件を満たす場合には「高度プロフェッショナル制度」を適用することができます。
(1) 労働者が、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務のうち、労働者に就かせることとする業務
(2) 使用者との書面による合意に基づき職務が明確に定められていること。
(3) 年間の賃金が基準年間平均給与額の3倍の額を上回る水準以上であること。
(4) 使用者が労働者の労働時間を把握する措置を講じること。
(5) 使用者が労働者に対して、1年間で104日以上かつ4週間で4日以上の休日を与えること。
(6) 使用者が次のいずれかの措置を講じること。
 ア.休息時間を確保し、深夜時間帯の労働回数の上限を定めること。
 イ.一定期間の労働時間の上限を定めること。
 ウ.1年に1回以上の2週間連続の休日を与えること。
 エ.健康診断を実施すること

一定の収入ってどのくらい?

具体的な金額は、厚生労働省令で基準年間平均給与額(毎月勤労統計から算定される労働者1人当たりの給与の平均額)の3倍を上回る額とされており、少なくとも1000万円以上の収入を得ている人が対象となる見込みです。


職場のパワーハラスメントについて

  • 2018年 10月 30日

そもそも「パワハラ」の定義って?

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義づけられています(厚生労働省 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」平成24年1月)。

どういう行為がパワハラになる?

たとえば、営業目標を達成できなかった社員に対して、罰ゲームとしてコスプレをさせて写真を撮影する行為などはパワハラに該当すると考えられます。
一般に、パワハラは、
 (1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
 (2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
 (3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
 (4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
 (5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
 (6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
の類型に分類されるといわれています。

Continue Reading »


危機管理の話

  • 2018年 10月 29日

危機管理とはどういうことですか?

事故や不祥事などの企業にとっての危機が発覚したときの対応や、そうした危機を予防するための措置などを危機管理と言います。ツイッターやフェイスブックなどのSNSでの、いわゆる炎上などへの対処も危機管理に含めて考えられているようです。

危機管理の成功例、失敗例を教えて!

失敗例の一つとして、日本大学のアメリカンフットボール選手が関西学院大学の選手にプレー終了後に後方からタックルした事案が挙げられます。試合後、日大が速やかに誠意ある謝罪を行わなかったため、タックルは監督の指示によるものであったとの報道がなされ、最終的には監督が辞任せざるを得ない状態となりました。

一方、2018年2月16日のアスクル物流センターでの火災時のアスクルの対応は、危機管理の成功例と言われています。アスクルは、火災発生直後から、役員、社長が現地で会見をしたり、近隣向けの説明会、記者説明会を開催し、情報を積極的に開示していきました。こうした姿勢が受け容れられ、企業にダメージを与えるような大きな批判を受けることを回避できました。

危機管理のポイントは何ですか?

キーポイントとなるのは、迅速な情報把握と誠意ある対応です。こうした対処を実現するためには、事前に、企業にとって潜在的にどのようなリスクが存在するのかを把握し、危機が発生したときの体制を検討しておくなどの準備も重要となります。

逆に、危機が発生したときに、企業自身も被害者であるというかのような対応や、企業には責任がないかのように受け止められる対応は、好ましい対処とは言えません。


事業承継の準備してますか?

  • 2018年 10月 29日

「事業承継」って何?

事業承継とは、現経営者から後継者へと事業のバトンタッチを行うことです。
不動産や機械設備など個別財産を譲渡するだけでなく、従業員や取引先との関係、技術やノウハウなどの経営資源も含めた一体としての「事業」を次の世代へと引き継ぎます。

「事業承継」ってそんなに重要なの?

現在、日本の中小事業者では、経営者の高齢化が進んでいます。元気な経営者が現役で頑張っているという理由もありますが、一方で後継者がいない等の理由により世代交代が進んでいないという側面もあります。

事業承継は、円滑な世代交代を実現することで、従業員の雇用や取引先との関係を維持し、これまで培ってきた技術やノウハウを次世代に残すためにも、経営者が取り組まなければならない重要な問題です。

「事業承継」に準備が必要なの?

いざ後継者に事業を引き継ごうと思っても、あらかじめ準備をしておかないと円滑な事業承継を実現することは困難です。次のように、考えておかないといけないことが、実はたくさんあるんです。
 ・後継者は決まっていますか?
 ・後継者は、後継者として必要な能力を身につけていますか?
 ・承継する資産や契約を把握していますか?
 ・資産や契約の承継にどのような手続が必要ですか?
 ・承継によって税金は発生しませんか?

どんなことから準備を始めれば良いの?

事業承継は、従業員や取引先など事業に関わる人たちにも影響を与える可能性があります。経営者だけの問題ではないことを理解し、準備の重要さを認識することがスタートです。

その上で、事業の現状把握として、
 (1) 会社の強み・弱みを知り、事業を維持・成長させていくために取り組むべき課題を見つける
 (2) 事業に使っている経営者の個人資産がある場合、貸借関係を整理し、承継する資産を選別する
 (3) 個人資産との混同をなくし、財務状況や資金繰り状況の透明性を高める
などの準備から始めましょう。

どのくらいの準備期間が必要なの?

後継者の選定・育成から始める場合には、概ね5年から10年くらいの準備期間が必要といわれています。いずれにしろ、早めに準備を始めることが大切です。


職務発明の発明報償について

  • 2018年 10月 26日

発明報償って、何が根拠なの?

特許法35条4項には、従業者等が職務発明を完成させ、契約や勤務規則等により、使用者等に特許を受ける権利を取得させるなどした場合、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有すると規定されています。

「相当の利益」ってどうやって計算するの?

(1) 自社で実施している場合
使用者等は無償の通常実施権を有していることから、独占的に実施できる地位を取得することによって得られる利益(独占の利益または超過利益と呼ばれます)が基準となります。具体的には、「相当の利益=売上額×超過売上の割合×仮想実施料率×従業員の貢献度×共同発明者間における当人の貢献度」により計算されます(裁判例 平成20年(ネ)第10082号など)。

(2) 他社に実施許諾している場合
実際に受け取っている実施料が基準となり、具体的には、「相当の利益=実施料×従業員の貢献度×共同発明者間における当人の貢献度」により計算されます(裁判例 平成18年(ワ)第24193号など)。

自社実施の場合、各係数は具体的にどれくらいなの?

過去の裁判例では、超過売上の割合は10~50%、仮想実施料率は2~20%、従業員の貢献度は2~60%などとなっており、大半はそれぞれが数%であることが多く、よほどの大発明でない限りさほど大きな金額にはなりません。
たとえば1億円を売り上げる商品であっても、「相当の利益」の金額は各係数を掛け合わせると数万円程度になることは多々あります。

予め職務発明に対する報償の金額や算定方法を定めておくことはできる?

予め「職務発明規程」等によって、報償の金額や算定方法を定めておくことはできます。
ただし、当該規定の金額や算定方法によって算定される金額を支払うことが不合理な場合には、改めて、個々に「相当の利益」を算定しなければなりません。不合理か否かは、使用者等と従業者等との間の協議の状況など、当該規定を定める過程が重要になりますので注意しましょう。


Next »