発明報償って、何が根拠なの?
特許法35条4項には、従業者等が職務発明を完成させ、契約や勤務規則等により、使用者等に特許を受ける権利を取得させるなどした場合、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有すると規定されています。
「相当の利益」ってどうやって計算するの?
(1) 自社で実施している場合
使用者等は無償の通常実施権を有していることから、独占的に実施できる地位を取得することによって得られる利益(独占の利益または超過利益と呼ばれます)が基準となります。具体的には、「相当の利益=売上額×超過売上の割合×仮想実施料率×従業員の貢献度×共同発明者間における当人の貢献度」により計算されます(裁判例 平成20年(ネ)第10082号など)。
(2) 他社に実施許諾している場合
実際に受け取っている実施料が基準となり、具体的には、「相当の利益=実施料×従業員の貢献度×共同発明者間における当人の貢献度」により計算されます(裁判例 平成18年(ワ)第24193号など)。
自社実施の場合、各係数は具体的にどれくらいなの?
過去の裁判例では、超過売上の割合は10~50%、仮想実施料率は2~20%、従業員の貢献度は2~60%などとなっており、大半はそれぞれが数%であることが多く、よほどの大発明でない限りさほど大きな金額にはなりません。
たとえば1億円を売り上げる商品であっても、「相当の利益」の金額は各係数を掛け合わせると数万円程度になることは多々あります。
予め職務発明に対する報償の金額や算定方法を定めておくことはできる?
予め「職務発明規程」等によって、報償の金額や算定方法を定めておくことはできます。
ただし、当該規定の金額や算定方法によって算定される金額を支払うことが不合理な場合には、改めて、個々に「相当の利益」を算定しなければなりません。不合理か否かは、使用者等と従業者等との間の協議の状況など、当該規定を定める過程が重要になりますので注意しましょう。