意匠法改正が動き出します(弁理士・弁護士 加藤光宏)

2013年11月

意匠法改正が動き出します(弁理士・弁護士 加藤光宏)

  • 2013年 11月 29日

「経済産業省・特許庁は2013年内をめどに、携帯端末などのソフトの画像デザインに権利保護の範囲を拡大する制度整備の素案を策定する。」との報道がなされた(関連記事)。画面デザインの保護については、先月、セミナーを開いたところだ。(セミナー資料)ようやく動き出したか、という感じである。
 最近までの動向を簡単に説明する。画面の保護についての議論は、最近に始まったことではなく、実は、平成16年ころからずっと議論されてきていた。その上で、平成18年の意匠法改正がなされ、操作画面が一定の範囲で保護されるようになった(資料5ページ)。ところが、お隣の韓国では、それよりも前の2003年(平成15年)から広く画像の意匠を保護しているのである(資料8ページ)。平成18年の改正を経ても、他国と比較すると、日本での画像意匠の保護範囲は、とても狭い状態となってしまっているのが現状である(資料11ページ)。
 そんな中、スマートフォン全盛を迎え、平成19年ころから、画像意匠の保護について議論が再燃した。画像意匠の保護について積極派と消極派の議論は、大きくまとめると、保護の必要性と意匠の本質(物品性)ということになる(資料12ページ)。保護の必要性についての議論は、保護を拡充すべしという積極論と、保護を広げることによる他人からの権利行使を恐れる消極論の衝突である。物品性についての議論は、物品を離れて抽象的な「画像」を保護すべしという考え方と、意匠とは物品のデザインであるという伝統的な概念を尊重する考え方との衝突である。
 こうした議論を経て出てきたのが、「情報機器」という折衷案的な物品を定義し、この画像という形で画像意匠を保護しようとする考え方だ(資料13ページ)。そして、議論は、平成24年11月以降、ここでストップしていた。
 今回、改めて第1回審議会が開催され、その資料が公表された。スタンスとしては、改めて画像意匠の保護について検討をし、法改正の素案をまとめようという姿勢に見える。
 しかし、改正は、「情報機器」という方向性で進むのだろう。冒頭の記事にある「年内をめどに」というスケジュールがたてられていることを考えれば、改めて議論をしている余裕などないと思われる。また、配付資料の内容を見ると、「情報機器」という枠で登録を認める案と並べて、「機能ごとに登録を認める」という案が記載されているが、これはいかにも当て馬だ。この考え方では、「物品」という概念から離れている一方、「機能」という不明瞭な拘束を設けているため、積極派、消極派のいずれからも賛同されないだろうからだ。
 具体的な法改正がどのように進むのかは、しばらく注目する必要があるが、仮に「情報機器」という概念で拡充されたとしても、諸外国(欧州、米国、韓国)と同等の保護とは言えないという点には注意が必要だ。


Google Books合法判決(弁理士・弁護士 加藤光宏)

  • 2013年 11月 16日

Google Booksは合法との米国地裁判決が出されました(関連記事)。Google Booksは、様々な図書をスキャンして電子化し、インターネットで検索・閲覧可能にしたサービスです。これを利用すれば、ユーザが、キーワードを入力すれば、書籍のタイトルに含まれているものだけでなく、本文中に含まれているものまで検索できます。別に、電子化した書籍全体をダウンロード可能にしている訳ではなく、電子化した書籍を販売している訳ではありません。それでも、書籍をスキャンして電子化していることが、複製権の侵害だということで問題になっている訳です。
判決は、Google Booksの行為は、効率的に書籍を検索するための貴重なツールであり、著者や出版社にとっても新たな読者や収入源を生み出している、ということを理由に、フェア・ユース(公正な利用)に当たるとして著作権を侵害していないとしています。
この問題、実は過去に和解がまとまったのですが、地裁がそれを承認しなかったため、判決となりました。和解の過程で、日本の書籍は対象外との方向性が出ていたのですが、今回の判決で、Google Booksの行為は著作権を侵害しないという結論になった訳ですから、日本の書籍のスキャンも同様ということになり、日本への影響も考えられます。(あくまでも米国で日本の書籍をスキャンの対象にする場合のことです。日本の著作権法にはフェア・ユースという規程はないので、日本で、同様のことを行えば、侵害という結論になる可能性もあります。)
米国での訴訟は、上訴されるようです。しばらく動向に注目したいと思います。