「経済産業省・特許庁は2013年内をめどに、携帯端末などのソフトの画像デザインに権利保護の範囲を拡大する制度整備の素案を策定する。」との報道がなされた(関連記事)。画面デザインの保護については、先月、セミナーを開いたところだ。(セミナー資料)ようやく動き出したか、という感じである。
最近までの動向を簡単に説明する。画面の保護についての議論は、最近に始まったことではなく、実は、平成16年ころからずっと議論されてきていた。その上で、平成18年の意匠法改正がなされ、操作画面が一定の範囲で保護されるようになった(資料5ページ)。ところが、お隣の韓国では、それよりも前の2003年(平成15年)から広く画像の意匠を保護しているのである(資料8ページ)。平成18年の改正を経ても、他国と比較すると、日本での画像意匠の保護範囲は、とても狭い状態となってしまっているのが現状である(資料11ページ)。
そんな中、スマートフォン全盛を迎え、平成19年ころから、画像意匠の保護について議論が再燃した。画像意匠の保護について積極派と消極派の議論は、大きくまとめると、保護の必要性と意匠の本質(物品性)ということになる(資料12ページ)。保護の必要性についての議論は、保護を拡充すべしという積極論と、保護を広げることによる他人からの権利行使を恐れる消極論の衝突である。物品性についての議論は、物品を離れて抽象的な「画像」を保護すべしという考え方と、意匠とは物品のデザインであるという伝統的な概念を尊重する考え方との衝突である。
こうした議論を経て出てきたのが、「情報機器」という折衷案的な物品を定義し、この画像という形で画像意匠を保護しようとする考え方だ(資料13ページ)。そして、議論は、平成24年11月以降、ここでストップしていた。
今回、改めて第1回審議会が開催され、その資料が公表された。スタンスとしては、改めて画像意匠の保護について検討をし、法改正の素案をまとめようという姿勢に見える。
しかし、改正は、「情報機器」という方向性で進むのだろう。冒頭の記事にある「年内をめどに」というスケジュールがたてられていることを考えれば、改めて議論をしている余裕などないと思われる。また、配付資料の内容を見ると、「情報機器」という枠で登録を認める案と並べて、「機能ごとに登録を認める」という案が記載されているが、これはいかにも当て馬だ。この考え方では、「物品」という概念から離れている一方、「機能」という不明瞭な拘束を設けているため、積極派、消極派のいずれからも賛同されないだろうからだ。
具体的な法改正がどのように進むのかは、しばらく注目する必要があるが、仮に「情報機器」という概念で拡充されたとしても、諸外国(欧州、米国、韓国)と同等の保護とは言えないという点には注意が必要だ。
意匠法改正が動き出します(弁理士・弁護士 加藤光宏)
- 2013年 11月 29日