タイ・インドネシアにおける権利行使(2)(弁理士・弁護士 加藤光宏)

タイ・インドネシアにおける権利行使(2)(弁理士・弁護士 加藤光宏)

  • 2014年 5月 01日

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【刑事訴訟の特徴】
 日本では、知的財産権の侵害に対して刑事手続がとられることは、多くはないが、タイでは刑事手続が90%以上を占める。刑事手続は、特許権などの知的財産権の権利者が警察に告訴することで開始される。
 タイの弁護士および検察に聞いたところ、タイでは告訴は比較的受理されやすいとのことであった。例えば、小売店などの店頭で侵害品が販売されている場合は、自身が権利者であることを示す証明書(登録証など)、侵害品のサンプルがあれば足りるとのことである。告訴が受理されると、警察が捜査を行い、検察に事件を送致する。その後、検察が捜査で得られた証拠を精査して、起訴すると刑事訴訟が開始される。訴訟手続は検察官が行う。
 日本と異なり、タイでは、権利者自身が起訴する場合、検察官が単独で起訴する場合、検察官と権利者とが共同原告として起訴する場合の3通りがある。検察官が単独で起訴した後、権利者が加わることによって共同原告になる場合もある。
 このように、権利者が刑事訴訟に関与することができるのが、タイでの刑事訴訟の特色である。共同原告となった権利者は、訴訟においても検察官と同様に立証活動を進めることができるが、実務上、検察官が主体となって訴訟手続を進め、共同原告は検察官をサポートすることが多いとのことであった。
【民事訴訟の特徴】
 タイで民事訴訟は、概して刑事訴訟よりもコストが高く長期間かかると言われている。コストの多くは、翻訳料が占めるようである。民事訴訟の場合、証拠書類等を全てタイ語に翻訳して提出する必要があるからである。ただし、CIPITCで行われる知的財産権訴訟の場合、当事者の双方が同意すれば、特則により、証拠等を英語で提出することも認められる。実際、ほとんどの場合、英語で提出することについて同意が得られているようである。英語で済ませることができれば、翻訳料はかなり抑えることが可能となる。知的財産権訴訟では、CIPITCのみで認められる特別な手続を効果的に活用することが好ましい。
 民事訴訟において、証拠保全など、日本でとりうる措置は、一応、タイにおいても用意されていると考えられる。民事訴訟の際、外国の書類には、全て公証および領事認証が必要となるなど、独特の制度もあり、証拠の提出には時間を要すると思われる。こうした特徴は、種々の資料で挙げられてはいるものの、それに対する対策は、ほとんどないというのが実情であろう。訴訟になることを予想し、しかもその訴訟で、どのような証拠書類が必要になるかを予想した上で、公証等の準備を進めておくことなど不可能だからである。

(続く)


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