イケメンゴリラ(弁理士・弁護士 加藤光宏)

2016年5月

イケメンゴリラ(弁理士・弁護士 加藤光宏)

  • 2016年 5月 26日

 名古屋市東山動物園のイケメンゴリラの名前「シャバーニ」を名古屋市が商標登録出願したようだ。

 指定商品が「ゴリラ」になっていたら面白いと思い、早速、調べてみたところ、さすがにそのようなことにはなっていなかった。DVD、キーホルダー、文具類、カバン類など、シャバーニが使用されそうな商品名がずらりと並んでいる。もし、指定商品が「ゴリラ」とされていたら、「ゴリラ」を商品として販売する際に「シャバーニ」という名称を使うことについて登録したことになるのだ。商標のことをよく知らない方が手続きをすると、侵しがちな誤りかも知れない。この点、シャバーニの出願は、正解。

 「シャバーニ」(商願2016-30028)と「SHABANI」(商願2016-30027)の2件が出願されており、いずれも標準文字となっている。デザイン性のあるロゴ等ではない。登録された暁には、シャバーニの名前を商品に使用すれば商標権の侵害になるということだ。

 どこにもゴリラは関係ないじゃないの?と思われる方もいるかも知れない。その通りである。だから、シャバーニの写真やイラストを載せなくても、商品に「シャバーニ」という名前をつけて売るだけで侵害になるのだ。お気をつけ下さい。

 なお、「イケメンゴリラ」は未だ登録も出願もされていないようだ。従って、商品に「イケメンゴリラ」とだけ書いて、「シャバーニ」や「SHABANI」と書かなければ、今のところ、商標権侵害となるおそれはないことになる。
 また、「名古屋市」による商標登録および出願を調べた限りでは、シャバーニの写真やイラストについての出願もされてはいない。従って、やはり「シャバーニ」や「SHABANI」と書かなければ、自前の写真やイラスト(他人のまねはダメですよ。著作権の問題が生じるから。)を商品に付しても、今のところ、商標権侵害となるおそれはないことになる。

 記事によれば、今回の出願の意図は、シャバーニの「活躍を悪意を持った第三者に邪魔されないようにするため」とのことなので、第三者がいわゆる便乗商品などを販売することに目を光らせる意図ではないのだろう。それはそれで一つの方針だと思う。

 実際、第三者による模倣や便乗を防止するのは、なかなか難しい。あからさまな便乗商品が出回って、シャバーニが「イケてねぇ」とイケメンを曇らせませぬよう。


高級「生」食パン(弁理士・弁護士 加藤 光宏)

  • 2016年 5月 08日

 乃が美の高級「生」食パンというものを、初めて購入し、味わってみました。

 名古屋に出店していたことは知っていたのですが、場所を全く知らなかった私。全く偶然に店の前を通りかかり、これまた偶然に予約無しでも購入できる、とのこと。この縁を逃す訳には、いきません。
 焼かずに「生」で食べてもおいしいのですが、やっぱ、トーストの方が好みかなぁ。

 さて、商標のお話です。

 この高級「生」食パン。これで商標登録されているとのこと。早速、調べてみました。

 確かに、『高級「生」食パン』(商標登録第5760247号)で登録されていました。標準文字で登録されています。食パンに使う商標としては、「高級」も「食パン」も識別力がないでしょうから、食パンなのに「生」という点だけで識別力が認められたのでしょう。

 同じく、『「生」食パン』(商標登録第5760247号)が出願されていますが、こちらは、現在、審査中のようです。「高級」のあり無しで、識別力が大きく変わるとも思えませんので、時期に登録されるのではないでしょうか。

 ついでに、「生」+物の名前で、どれくらい商標登録されているのか、調べてみました。1000件を超える登録があります。
 ただ、ほとんどが、『ヤマザキ 生ケーキ』(商標登録第4495250号)のように、会社名を頭に付けるなどしていたり、『生茶』(商標登録第5000388号)のように商品のラベル全体の外観で登録していたりして、なかなか標準文字だけでの登録というのはありません。
 『生ちち』(商標登録第4511805号)なんていう、指定商品によっては、そのままじゃないか、と思われる標準文字の商標もありましたが、「コーヒー及びココア等」が指定商品となっていました。
 『★蔵出し生ビール』(商標登録第3267038号)は、一応、ロゴで登録されてはいますが、特にデザイン性に富んだロゴになっている訳ではありません。「生ビール」自体が一般名称ですから、ちょっと「生」食パンとはケースが違いますね。

 あれこれ調べた結果、『生リップ』(商標登録第5099190号)というのを見つけました。指定商品は「せっけん類、化粧品」です。どんなリップクリームだろう?と、「生リップ」でググってみたところ、まぁ、恐ろしい結果に。。。誰も見ていなくてよかった。

 食パンについては、『極上の「レア」食パン』(商願2015-120758)というのも出願されていました。現在、審査中で拒絶理由が通知されているようです。

 拒絶理由の内容は調べていませんが、「極上」と「高級」、「生」と「レア」は、意味が似ていますから、『高級「生」食パン』(商標登録第5760247号)と類似の商標だと言われているのではないでしょうか。

 さて、この出願、どうなるでしょうか?焦げ付きませんように。