交通事故に関する法律問題においては保険会社が関わってきますが、最近、いわゆる任意保険の加入に際し、弁護士費用特約なるものを付帯されている方も多いと思われます。
弁護士費用特約とは、一般的に、契約者やその家族などが交通事故に遭い、相手方に対して損害賠償を請求する際に生じる弁護士費用等を保険会社が300万円を上限として負担する特約です(補償内容は保険会社との契約内容によって変わります)。
この弁護士費用特約は、請求額が僅少な物損・人身事故などについて、弁護士に支払う費用を懸念することなく、弁護士に相談・委任することができることに最大のメリットがあるといえます。弁護士に支払う費用のほうが高くつくから、依頼を止め、相手方からの示談内容に泣く泣く応じるといった、いわゆる泣き寝入りを一定程度防ぐことができるのです。
この弁護士費用特約は、最近非常に普及しているため、相談時に相談者様より弁護士費用特約を付帯している旨の申告がなくとも当職のほうから必ず確認するようにしています。
なお、「特約」との名称ではありますが、現在、この弁護士費用特約をオプションではなく自動的に付帯する保険会社さえあるようです。
ところで、このような弁護士費用の支払いに備える保険は、自動車の任意保険に限られません。
最近では、日常生活の種々の場面で遭遇する法律問題について、弁護士に相談・委任した場合に発生する弁護士費用等を保険金として支払う保険も販売されています。このような保険は、訴訟社会である欧米においては、珍しくはありませんが、日本ではまだまだ珍しく、ごく最近になって販売が開始されました。
今後、このような保険の普及が加速することにより、市民の方々にとって、弁護士に対する敷居を低くする効果が一定程度あるといえるでしょう。しかし、だからといって日本が欧米のような訴訟社会になるのかといえばそうではありません。そもそも争いごとを好まない日本人の民族性や訴訟を指揮する裁判官の数などの物理的な問題のために日本が訴訟社会になるとは限らないからです。
それはさておき、弁護士業務に関わる事項として、任意保険における弁護士費用特約も含め、弁護士費用の支払いに備える保険の普及の動向については、今後も注目したいと思います。
弁護士費用の支払いに備える保険の普及(弁護士 中村博太郎)
- 2014年 3月 04日
将来の財産管理や身上監護について少しでも不安があれば…(弁護士 中村博太郎)
- 2013年 12月 25日
将来、認知症等を患ってしまい、日常生活のあらゆる場面において自ら判断することができなくなってしまった場合のことを想像してみてください。
このような場合、裁判所に申立を行い、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあると認められれば、審判により法定後見人が選任され、法定後見人は本人のために一定の後見事務を行います。しかし、法定後見人は、家庭裁判所が選任するため、場合によっては、本人の意に沿わない方が選任されるかもしれません。選任後、法定後見人との信頼関係を構築することは、困難かもしれません。なお、誰が選任されたかということのみを理由に審判に対して不服を申し立てることはできません。
これに対して、本人がいまだ十分な判断能力を備えている間に、信頼できる方との間で任意後見契約を締結しておけば、後見人が必要となった場合に、その方が任意後見人として後見事務を行います。なお、自分の信頼できる任意後見人ではありますが、任意後見人を監督する任意後見監督人が裁判所によって選任されますので、安心感はさらに増すでしょう。
将来の財産管理や身上監護について不安がある方は、あらかじめ信頼できる方との間で任意後見契約を締結しておくことをお勧めいたします。なお、任意後見契約は、重要な契約と位置付けられているため、契約書は公証人役場において公正証書にて作成する必要があります。法律の知識が必要となるため、専門家の力を借りて作成されるとよいでしょう。